本『霧の旗』松本清張
巻末の解説(橋本忍)より
以下抜粋
『私は人間の知恵がつくり上げた、現在の文化というもののある一部分にゆきづまりを、八方ふさがりともいえる殆ど世紀末に近いようなものを最近はつくづくと感じることが多い。
どうしたことが原因でこういう現象が起きてきたのかよく分からない。
ただ、そういう事態をもたらしたものの一部に、私は元来動物であるべき人間の本性の一部分をわざと圧し潰してしまっているようなところがあるのではなかろうかと、時々不安になることがある。
人間は、もっともっと動物であるという次元に立ち、改めてもともとその動物であるべき人間の幸福を築くためには、どんな考え方を持ち、どんな社会を作るべきか、それを考えなおさなければいけないような気がしてならない。』